

会話できるようになる前から実践!
「たくさん褒める」より大切なこと
バービー:今日の対談にあたり、先生にお聞きしたいことが山盛りです(笑)。まず気になるのが私は娘に対して褒めすぎではないか……? ということ。褒められ待ちが習慣化してしまったらどうしようという気持ちもあり。でも、可愛いからやっぱり褒めちゃうんですよね。
渡辺:褒めすぎるのは子どもに悪い、という学術的なものは読んだことがありません。安心してください! そして実は量よりも大切なのが、声のトーンと表情。私の研究ではノンバーバル(言語以外で行うコミュニケーション)がすごく重要だと考えています。
バービー:私はすごくオーバーに褒めるんです。なんなら小躍りしちゃうぐらい!
渡辺:とってもいいですよ! たとえばお子さんが絵を描いていて、ちょっと下手かも……と思いつつ『上手に描いてるね』と褒めたとします。すると、子どもには本音のニュアンスが伝わってしまう。無理をして褒めると声に現れてしまうんですね。どんな声のトーンで話しているかというのは意外と無意識。だから、バービーさんのように心から素晴らしいと思ってオーバーな表現になっているのはいいと思います!
バービー:それを聞いてすごく安心しました。周りが引くぐらい喜んで踊っているので。日々、歌って踊って子どもを追いかけ回して疲れるというルーティン(笑)。

渡辺:よく、叱って育てるのと褒めて育てるのはどっちがいい? と聞かれますが、それより「こういうことができたからすごいね」「これは相手を傷つけてしまうから、やめた方がよかったね」という説明が大切。子どもは先に“聞く力”が育つので、しゃべりだす前から、褒めるときも注意するときも理由をセットにして伝える習慣を身につけるといいですね。これは子どもがいくつになっても同じです。
バービー:前置きがあったうえで褒めるといいんですね。
渡辺:個人的に仕草にも本音が出ると思った経験があって、子どもを早く寝かしつけて仕事をしようと思うと大抵寝ない。でも、時間があるからとことん付き合おう!という日に限ってすぐ寝てしまう。きっと、早く寝てほしい魂胆が、トントンする薬指あたりから出ている気がするんです(笑)。
イライラも楽しいも
感情は伝染する

バービー:子どもと親の感情は2歳ぐらいまで連動している、という動画を見たことがあって。実際そうなのでしょうか?
渡辺:「情動感染」という言葉があって、たとえば朝誰かがイライラするとみんなイライラしてしまう。お母さんもお父さんも楽しい感じでいると、みんなが楽しくなる。子どもはそういう感情を読み取りますね。
バービー:育児のことで、よく夫婦間で小競り合いをするのですが、娘の前では声を荒げず「後で1回話そうか」と伝え、娘の前でケンカしないようにしています。夫婦でふざけ合っていたときのこと。彼の帽子の金具が顔に当たって痛かったので「やめてよ!」と私が怒ったら娘が夫を睨んでいたらしく。ママを傷つけた! と感じ取っていたのかも。

バービー:娘はすごく空気を読むことに長けているんです。まだ8ヵ月なのに、大人がまだ眠っていると思うと声を出さないし、大人が起きると娘も起き上がる。外の人にも笑顔を振りまくので、私の前だけは空気を読みすぎる癖をオフしていいよって思うんです。
渡辺:これからだんだん言葉を獲得してものごとの概念を理解していきます。心がものすごいスピードで成長していくんですね。1歳、2歳になって言葉を獲得して文章などを話すようになったら「そんなに笑いすぎなくていいんだよ」などと教えていけば、わかってくるようになると思いますよ。
しゃべりだす前のベビー期に
気をつけたい親の対応

渡辺:0歳から1歳までは、基本的な信頼感を獲得する時期。親の聞いてあげる力や応答力が大きく関わってきます。子どもが何かを発信した時に「怖いの?」とか「嬉しいんだね」となんでも応えてあげると、「分かってくれてる!」と愛着が形成され、お母さんとお父さんは自分にとっての安全基地という認識ができあがるんですよ。
バービー:親の応答力が愛着形成に大きく関わっているんですね。勉強になります! 気になっているのが、泣いた時に抱っこをすぐした方がいいのか問題。これだったら抱っこしなくても大丈夫かな? もうちょっと様子を見た方がいいかなと、考えてしまうことが。
渡辺:抱っこするしないというよりは、関心を向けてあげることが大事です。もちろん言葉でもいいですよ。何かを発信したときに返してくれる人がいるというのは、“自分がここに存在してよい”という自己肯定感につながります。

渡辺:また、歩き始めると子どもはよく転びますよね。そのとき親が「大丈夫!? 血出てない!?」などと騒ぎ過ぎると、子どもは神経質になりやすい傾向に。子どもは1歳2歳のときに転んでも、ケガの度合いはわからないもの。「社会的参照」という言葉があって、子どもはいちばん好きな人の顔色を見てこれが大変なケガかどうかを判断します。親が騒いでいると泣きますし、大したことないよ! という顔で見ていると、あれ? 大したことないのかな? というように。
バービー:子どもは親の顔色を見て判断するんですね。声かけをしつつ、こっちも慌てないのがいちばんいいってことですね。すごくいいアドバイス!
言葉を覚えるコンテンツ
動画は絵本や歌の代替になる?

バービー:言葉を覚えるためのツールとして動画やテレビ、アニメを見せるのはどうなんでしょうか?
渡辺:それ自体が悪いとは思いませんが、見る・聞くを中心とした遊びで受動的なもの。吸収したり真似したりする大事な時間でもありますが、双方向になりにくいリスクも。
バービー:わかります。動画って一方的に与えられたものをただ見ているだけですもんね。
渡辺:絵本はコミュニケーションをとりながら能動的にもできますが、動画はそうはいきません。子どもは新しい刺激(新奇刺激)を好む特性があり、その傾向を利用したサイトには注意が必要です。たとえば、暴力的な表現や性的表現を含む動画“エルサゲート”など。0歳から2歳までは感覚が発達する時でもあるので、いろんな色があるね、触るとザラザラしているね、と生活の中で言葉を添えながら経験させてあげると、経験と言葉がリンクして意味のある言葉を覚えやすくなりますよ。

バービー:私は悲しい歌も楽しい歌も、感情を乗せて全身で踊りながら歌って子どもに見せているんです。そこから色々受け取ってほしくて。
渡辺:それはいいですね。バービーさんだからできること! 感情ボキャブラリーは親が使っていくことによって、子どもも獲得していくものです。何か感じた経験と親が使っていた言葉が次第にリンクして、心の豊かさにもつながりますよ!
「聞く力」がぐんぐん育つ赤ちゃん期。声のトーンと表情、仕草を意識しながら積極的に声がけをし、子どものアプローチにもしっかり応答を。しゃべりだす前の準備期間に、親と子の愛着関係を築きましょう。次回は「子どもがしゃべり出してから心がけたいこと」をテーマにお届けします!